《ゴッドファーザー》を観た。午前十時の映画祭というやつである。例に漏れず、ほぼ満席だった。コッポラの作品は《地獄の黙示録》の体験以来だが、この映画は断片的に見たことある気もしてきた。が、話の全体像はほとんど知らなかったので、新鮮な体験ではあった。

マフィア映画、このブログで言及しているだけでも《シチリアーノ 裏切りの美学》《The Untouchables》くらいしか触れてないし、そもそもあんまり観ていないけれど、端的に言って気持ちのいいコンテンツではない。

本作や原作がアメリカン・マフィアの実態をどれだけ精確に描写しているのかは確かめられていない。だが、本作はマフィアとその類縁が苦しむ描写がほとんどで、一般人が苦しむような状況はほぼ直接的には描かれていない。その点は、楽しむ方としては救いなんだろうか。

念のため時代背景についてだが、マイケルが海兵隊で日本軍と戦ったとかの状況から 1940年代後半から 1950 年代の終わりまでが本作の時代背景にあたるらしい。この時代あたりから巨大なファミリーでも麻薬売買に着手しはじめたというのも概ね歴史に則しているようだ。

コルレオーネ・ファミリーの世代交代

ヴィトーの偉大さ、襲撃後の老境、そしてそれを引き継ぐことになったマイケル、この関係をやたらと丁寧に描くのが本作だ。それぞれのエピソードは、このテーマを生かすために十分に力を果たしている。語弊を恐れなければ、それ以上の役割はない。

結婚式、配役と種馬、新しい取引の申し出、銃撃、抗争、マイケルの避難生活、兄の死、復活と帰郷、洗礼式といった具合に展開やその関係は、割と明確で、どの状況も丁寧でフラットというか、これといってこのシーンが強烈に演出されているということはない。あえていえば、マイケルの避難生活は異世界感があるか。

洗礼式のさまざま

どこの描写もフラットとは言ったが、やはりクライマックスの洗礼式は欠かせないか。荘厳なカトリック教会で催される誕生した甥の洗礼式、「悪を取り除く」旨の問いに重ねられる粛々とした回答の裏で起こる粛正の数々は、善も悪もないような気分になってくる。爽快感までは感じなかったが、粛正のシーンはどれもよかった。

甲乙つけがたいが、モー・グリーンがマッサージを受けている最中に眼鏡越しに射抜かれるところがいいね。マイケルが食堂でやらかしたのと同じくらいのインパクトがあった。

教会で流れているのは、バッハのパッサカリアとフーガ BWV852 のように聞こえたが、音源として耳にする作品よりもスローテンポだったので確証が持てなかったが、サントラに入っているっぽいので確定か。

これもな、イタリアのカトリックが教会でバッハを洗礼式で流すのかわからないし、気になるのだが、どう調べればいいのかわからないので、単純に楽しんでおくに任せる。どうなんだろう。

要塞化していくゲート

ヴィトーが襲撃された直後だったかな。ファミリーの屋敷の入口は内側から車が横に壁になる形で蓋をされて、来訪者の勝手な侵入を防ぐ体制になったと見えた。それ以前がどうだったかは気づかなかったが。結婚式のシーンなどは同じ門か不明だが、オープンだったよね。

で、次のどこかのシーンでは申し訳程度のチェーンが装着されており、出入りがあるたびに外すなどしている描写があったが、さらに展開が進むと完全にゲートが据え付けられており、終盤に至っては何人もの門番が武装していたな。

ヴィトーの最期のシーンでもゲートが映っていたような気はするが、それがどうなっていたかはよくわからなかった。これも同じ門かすら怪しい。再鑑賞の機会があれば気にしたい。つまるところ抗争が激化していることを端的に表してたのだろうが、面白いなと眺めていた。

ランプ電飾による演出が

《地獄の黙示録》の河川沿いの基地や、中盤あたりの夜中の銃撃戦の現場、フランス租界なんかで電飾がいくつか使われていた印象が残っているが、本作でも結婚式-これは点灯していないが、あるいはクリスマスなんかで、電飾があって、監督のこだわりだろうかとなった。

帳尻合わせとアポロニア

抗争の歯止めが無くならない限りは双方の犠牲者の数や質で帳尻をあわせる暗黙の了解はある気がするが、この計算は話中でどうなっているのかな。

ルカの死をどうカウントするかだが、とりあえずこれはゼロで計算しておく。

まず、ヴィトーが瀕死にさせられる。そして追撃が加わる事態になる。これに対してソニーがタッタリアの次期当主を処分したが、この時点でコルレオーネ側の勘定が +1 だろうか。

さらにマイケルがソロッツォ(警官は無勘定)を処分することで更に +1 になる。

これらに対してようやくタッタリア側の報復が入り、まずはソニーが処分されて -1 、加えてアポロニアが処分されて更に -1 となる。

ここでプラマイゼロになるのか?

遂にはマイケルの決断によって、バルジーニ、モー・グリーン、テシオが処分される(ついでにカルロもだが)。これで +3 だろうか。

さんざん攻撃されつくしたコルレオーネ側が状況を大胆に整理した結果、マイケル、コルレオーネ側が多めに処分して勝利を収めた。なんと言ってもマイケルは、アポロニアを巻き添えにされているのだ。これはどちらかというとソロッツォ側の報復だったのかな。後半もなにかと忙しい為、アポロニアの存在を忘れがちだが、そりゃマイケルは静かにキレてるよな。

うーん、差し引きゼロ! としておくがどうだろうか。裏切ったシチリア時代の護衛君とかもしっかり処分されているのかね。

ケイにせよ、アポロニアにせよ、ヴィトーの配偶者のカルメロとは異なり、マフィアのボスの配偶者としての苦難に直面することになっている。組織の変容を体現しているとすれば単純だろうけれど、どうなんだろうな。

Part 2 の上映には行けなかったので、近いうちに配信なんかで鑑賞したい。

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