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映画:《斬、》

2018年末、Twitterでフォローが激賞していたので《斬、》をユーロスペースで観た。上映時間は80分だが、短いという感覚はない。ほどよく、満足感が高い。英題は《Killing》だそうで、つまるところ「殺し」にまつわる話だ。なんとなくというか、身も蓋もないがマンガ版の『バカボンド』に影響を受けたようなところはあるように思えるが、原作のバカボンドは読んでいないので、実はなんとも言えない。

冒頭、刀の鍛錬を描いたシーンがあり、これが非常に美しい。この部分だけ独立して鑑賞したいくらい、よい。よい意味で、作中で美しいと言えるのはこのシーンだけであり、これは良くも悪くも浮いて見える。主題のようなものに照らしてこのシーンの意味を考えれば、人を殺す道具が美しいと言えるのかという問いが起き、対して悪いのは道具ではなくて使う人間なのだという返答ができる。こんな問いは必要だろうかといえば、そうでもないだろうけど。

人物関係

感想を述べるにあたって以下の4名に触れる。

主人公:都築杢之進

農村で用心棒をしつつ生計を立て、都へいく準備を進めている。剣のうでこそ高いが、実は人を斬れない。そのことが本編で起こる事件をきっかけにして明るみになり、彼がついに人を殺すまでが描かれる。

村娘:ゆう

都築杢之進と恋仲のようでいてそうでもない。あいまいな関係だったが、ある事件をきっかけに都築に復讐を依頼する。とはいえ、都築は人を斬れないので、なかなか事態は進行しないのである。

ゴロツキ:源田瀬左衛門

事件を起こした(巻き込まれた)ゴロツキどものリーダー。

浪人:澤村次郎左衛門

事件を延焼させた本作の道化的なキャラクターと言える。当初こそ主人公の剣術のうでに見込んでいたが、結末に向けては主人公が持ちあわせているハズの殺意を引き出し、目覚めさせることに余命をかけた、ような立場か。

黒い顔になる

ゴロツキ(もしかしたら源田以外の人物かも)、澤村次郎、都築の3人は、物語の展開の順にそれぞれが狂気に染まるのだが、このときに表情が暗になる演出がある。わかりやすくて楽しい演出ポイントだが、どれもこれもていねいで、怖い。言ってしまえば、殺意に転ずる、あるいはその成れの果てがこの描写にかかっている。

いや、ほんと、これがおもしろいので、このために見てほしい。

個人的には澤村の顔が黒く染まっていくところが1番好きで、もはや旅の目的が達成されないことに自覚した結果、都築をけしかけることに命を費やすことを決めた。ろくでもない覚悟なのだが、演出もあいまってチョットだけカッコいいなぁと思ってしまった。くやしい。ただ、鑑賞してからしばらく経つので忘れてしまったが、ゆうが身を預けたあとの描写だったか、その前だったか。突き詰めて考えると、ちょっとおもしろい補助線が引けそうではある。

主人公の黒い顔

都築の黒い顔についてはエンディングの楽しみ方、解釈が千差万別しそうなので、別におもしろ味がある。

クライマックス、山中をさまよう都築、それを追う澤村、さらに続くゆうが居る。この3人の追いかけっこは、鬼気が迫っていてハラハラさせられ、ホラー映画のようでもあった。展開としてのオチはほぼ決まっているので、その描写にかかっている。

設定上は江戸近郊らしいが、撮影は山形県だという。追いかけっこをしている山のロケーションがよく、なんかまぁ山のなかで迷いながら追いかけっこしている。中腹くらいだろうか、ドクダミの葉でも広がったような踊り場があり、都築と澤村が切り結ぶ。澤村が絶命する。

都築の顔が黒く沈む。えーっとですね、ゴロツキと澤村は殺すことを意識して顔を黒くしたんですけれども、都築の場合は逆で殺した結果として顔が黒くなったんですね。反射神経とか正当防衛とかっていうとツマラナイけど、さんざん拒んでいたもののギリギリになっては選択する余地もなかった。

現場を目撃したゆうの絶叫、そのまま林のなかにさまよって消えていく都築。やっぱりホラーっぽいんだ、この読後感が。得体のしれない恐怖という意味で、この感覚は正しいと思う。

冒頭の鍛錬に照らせば技術論みたいな話にもなりそうではあり、 都築の場合は持ちあわせた技術に比して扱う覚悟が足りなかったということが分かる、人を殺す覚悟が必要かどうかという点はさておき、そのへんまでを含めて、うまく狂気を捌いている作品だった。

エンディングに鳴り響くゆうの絶叫もすごくよいです。

という話でした。

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日曜日、ひさびさに渋谷の東急にあるジュンク堂に行った。時間を潰すためだったので申し訳ないけど、書棚ショッピングを楽しんだ。いくつか気になる本も見つけたように思うが、どうにも周辺の情報量が多いような気がする。

小さな書店には欲しい本がない、興味のある分野において類書のストックが少ない。一方で大きな書店には本が多すぎる、みたいな一見するとアホみたいな状況があって、なるほど書評みたいな立場のひとたちや、意欲的な書店の話題などが盛り上がりを見せるものだなとも感じる。

気持ちのいい話ではないが、たとえば、専門家がオススメする本当に内容の良い本であっても、装丁や文字組み、製本具合がピンと来ないと購入する気にならないなど、そういう観点まで含めて書籍と向き合おうとすると、めんどくさいものだ。

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このあいだの阪神戦で菅野投手が乱調だった。先のヤクルト戦でも似たような乱調で、5勝こそあげているものの各種指標はよくない。巨人ファンではないものの圧巻の投球などをみせられたときには尊敬と賞賛の念しかないわけで、やはり気になるものだ。

野球まとめなどを読んでいると、単なる春先の不調、増量が裏目、投げすぎなどとさまざまな意見が飛び交っているが、まぁ投げすぎなんじゃなかろうか。打たれたときの投球動画をみると、素人目にもフォームが崩れていることが察せられる。復調してほしいな。

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note、多くの書き手が集まって賑わって、みんなが楽しめる、役に立つ情報があつまる、などなどイイことづくめな気がする一方で、手軽な集客・集金装置みたいなイメージがすでにちらつき始めているのが気になっている。

さらに難しいのが、それ(集客力、集金力)がコンテンツの質に関わらないというか、それを精査する困難があり、発信者が人気者であれば仕方ないという側面もあるのだけれど、こうもプラットフォームの陳腐化(と言ってしまっていいか)が進むのが速いのもな、という気分だ。

とはいえ、[おすすめ][マガジン][ピックアップ][注目カテゴリ]などのメニューも使ったことないし、そもそもそこまでハマってないので、私なりの偏見は強いのだろうな。

cakes も全然みなくなった。

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《名探偵ピカチュウ》を観てきた。レイトショーだったが、割と混んでいた。盛況ではないか。オイディプス王ではないが、こういう構成には弱い。《LEGO ムービー》を思い出す。

いやー、おもしろい。おもしろいが、説明しづらい。

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タスク管理ツールがどうこうという記事を読んでいた。紹介されていたのが、OmniFocus 3 と Things 3 だけだったので、なんだい Mac ユーザー向けの記事かいという話に終わるのだが、この2つは老舗であることだ。

Remember The Milk、Toodledo なども懐かしい。前者はデザインを刷新して久しいが、後者はいまだに古めかさを残している。それがいいということだと思う。

iPhone、Android などと連動して動くタスク管理アプリは数えきれないくらいあり、カレンダーやリマインダーなどに主機能が寄ったタイプまで合わせたらキリがない。

わたしはなんだかんだで Todoist に戻る。登場してからすぐ使いはじめた。一時期はプレミアムアカウントで使っていたが、いまは無料アカウントに戻している。いつからだろうかと少し調べたら、おそらく2012年のことのようだ。Wikipedia Todoist の記事がわりとおもしろい。HTML 5 の技術ベースで実現されたアプリらしい。へぇ。

手帳などを持ち歩き、開く習慣が身につけばノート単位での管理でもよさそうだが、この習慣づけが割と難しいように思う。

そういえば、TaskChute という管理ツールもある。時間を細かく記録するタイプだ。時間計測系の海外製のサービスでは Toggl が有名だと思うが、Toggl と Todoist を組み合わせるとちょうどいい感じになる。

iPhone ユーザーなら リマインダーアプリ、Android ユーザーなら Google Keep で用が足りるといえばそうだろうが、仕事とプライベート、別個に立ち上がるタスクとルーチン作業など、さまざまな要素が組み合わさると、やはり管理ツールにまとめたいなというのが今日時点での考えになっている。

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日曜日、テアトルで《愛がなんだ》を観てきた。角田光代さんの原作は読んだことがないが、作品説明には「全力疾走片思い小説」とある。まぁ、嘘ではなかろ。

報われないことに共感して感動することってあるだろうか。この作品の投げかけるものがよくわからない。まとまった感想、いつか書くだろうか。

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体育館のような広さの小洒落た会場で、小学校から大学まで同窓生だった友人が社内結婚をすることを発表した。しばらく会っていなかったが、これはとてもめでたいことだったので浮かれた私は、会場中で踊り狂っていたが、妙な事実に気がつく。この友人はすでに結婚しているはずだったのだ。奥さんと子供がいるのである。何がめでたいのかサッパリわからない。だが、結婚自体はめでたい。モヤモヤする。

というところで目が覚めた。

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フィクションとしての文字列を楽しむことがほとんどなくなったまま生活している。おそらく最後に楽しんだのは『天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1』で、残り2冊で完結というところで踏みとどまっている。完結を楽しむ気がない人間である。というのは、置いておいても、フィクションの文字を読む気が起きない。読めば楽しめることはわかっている。

これは優先順位の問題なのか、なんかのか。

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全3部作の最終作で、前2部が本編TVシリーズの再編版となり、本作はその後の物語となっている、ということでいいと思う。

前2部は見ておらず、本作だけ観た。本編TVシリーズのラストで亡くなったはずの主人公が実は生きていた。という経緯はアニメ雑誌に掲載されたビジュアルで何年も前からみんな知っていた。というわけで、こういった形の続編はタイミングの問題だけだったと思われるが、平成最後の年に制作・公開されるということになった。

全体的な構成としては、本編TVシリーズ冒頭での主人公ルルーシュとパートナーCCの契約にどう決着をつけるかというところに焦点があった。今回は登場人物にフォーカスして感想を残したい。

(さらに…)

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