マレビトが家庭を崩壊から救うちょっといい話だ|『山羊座のもとに』《Under Capricorn》

ヒッチコック『山羊座のもとに』《Under Capricorn》を観た。いつものように Wikipedia の情報に頼るが、原案となる戯曲、その小説化、第一脚本などを経て最終的な脚本に至ったらしい。

19世紀のオーストラリアが舞台という意外さというか、これは小説での設定なのだろうなと思うが、ヒッチコックの経歴に従って鑑賞しているとややビックリする。当時は本国のイギリスで犯罪者となった者たちの流刑地として、ひいては新しい大陸の開拓者として人々が送り込まれていた。

主人公は総督の甥であるチャールズ、ヒロインは主人公の姉の友人であったヘンリエッタ、その夫のフラスキー、夫婦の邸を管理する女中頭ミリーなどが主な登場人物となる。

オーストラリア到着直後、当地の有力者であるフラスキーと知り合ったチャールズは誘われた晩餐でヘンリエッタに再会する。が、彼女のメンタルはヘランコリーしていた。その理由とは…。

オチをばっさりと述べてしまうと、彼女を狂わせていった原因のひとつは女中頭ミリーの存在であり、もうひとつは夫フラスキーへの罪悪感であった。

三角関係と評するには、どちらかというとミリーを含めたフラスキー家の状況で、チャールズは英国紳士然とヘンリエッタを快復させようとしていたに過ぎないように見えた。最後まで見れば言うまでもないのだが、チャールズはちょっとしたマレビトなのだな、となる。

サスペンス味としては、ミリーのフラスキーへの愛の描写が異常であれば見どころもありそうなんだけど、ヘンリエッタを徐々に狂わせようとしている以外は(内容としては十分に異常なんだけれど)、演出はそんなにスリリングでもないんだよな。ラストはちょっと魅せたけど。

つまり、あまり見どころがない。逆に、ところどころコメディっぽくて、邸の汚い女中たち(なんとなくディズニー作品を思い出してしまった)の作った食べられる代物ではないハムエッグのシーン、ヘンリエッタの美貌に総督がすっかり変節してしまうシーンなどは笑えて、よかった。

ヒロインを演じたバーグマンは本作においては、あまり良くなかったと評されているらしいが、過去にフラスキーを犯罪者としてしまった事件の真相を独白するシーンは流石の迫力があってよかったな。

あとヒッチコックに限った話じゃないのだろうけど、螺旋階段が好きよね。撮って画になりやすいんだろうな。よく使われているので、やや食傷気味だよ。

後はアレだ、チャールズが乗馬が下手くそだったと回想されていた設定が、ちゃんと回収されているあたりは、一見すると平板な作品ではあるが、整っているところは整然としているねと勉強にはなった。