《ラストナイト・イン・ソーホー/Last Night in Soho》を観た。

Twitter のタイムラインでやたらと褒められていた。個人的にはそこそこ、くらいの面白さだった。ホラー作品という面で直近で鑑賞した《マリグナント_狂暴な悪夢》と比べると、性質の差こそあれギリギリで「マリグナント」のほうがよかったかなぁ。

ざっくりしたあらすじ

ファッションデザイナーを目指す少女:エリーは、都会の服飾学校に合格し、単身ロンドンへ赴く。彼女はコーンウォール地方に祖母と暮らしていた。その影響もあって 1960 年代のポップスを好んで聴く。都会への憧れもある。

引っ越し先のアパートの一室で彼女は、60 年代に存在した同世代の女の子:サンディーの思念に憑依する、みたいなことになる。なんとエリーには見えないものを見る能力があったのだ。

憧れの 60 年代のロンドンの光と闇、それらがほぼ一瞬でエリーを襲う。そんななかでサンディーが巻き込まれる不幸に、エリーはどう立ち向かうのか。

成功を夢見る 2 人

サンディーは歌姫に憧れて、エリーはファッションデザイナーに憧れて、それぞれロンドンに出てきた。舞台の表方、裏方の差こそあれ、それぞれに野望を抱いている。

それぞれの希望が早々に打ち砕かれていくのだが、そのへんの処理のしかたは現代映画だなという感じで、全体の展開に比して深刻には描写されない。というか、見せ方がスタイリッシュだったね。

サンディーが楽屋を逃げ回るシーンで周囲に描写されたグロテスクな世界は、ディズニーの「カリブの海賊」のような見世物感があったーまさに見世物とも言えるのだが。

この辺の扱いについて、救いといえば、それぞれの少女のポテンシャルはたしかにあったことが描写された点だろうか。救いとも言えないけれど。

エリーを襲う男たちの執念

個人的にはこれが不満だった。エリーの普段の生活にサンディー経由で生み出された男たちの亡霊が付きまといはじめる。ついには彼女は、ロンドンの繁華街を駆け回って逃げる羽目になるうえに、警察署に逃げ込む。えぇー。

男たちの亡霊がどうやって生み出されたのか、あるいは半ばエリーの妄想の産物であったかは定かではないが、間を持たせる以上の機能があったとは思えなかった。これらの一連の描写自体が特別に恐ろしいわけでもない。

むしろ話の流れの上で彼らは憎悪の対象だろうので、そういう意味では的確だったのかもしれないが、であれば結末が導くそれぞれの想念は完全に狂気だよね。まぁ、それでいいのか?

そのアパートはどうなっているの?

さすがにバレるやろ。「身元もおぼつかないやつらが」云々といかにもな説明台詞があったが、さすがにバレるやろ。ちょっとしたリアリティがなぁ、という点が個人的には引っかかった。

ざっくりしたまとめ

いうて主演 2 名は美しくて、眺めているだけで楽しい。それはよかった。ここでは不満げな感想が厚めになったが、映画としては普通に楽しめたのも確かであった。

イギリス映画、ロンドンが舞台ということで個人的にはヒッチコックをイメージせざるを得なかったが、包丁(ナイフ?)が舞うシーンは《サイコ》を意識しているだろうし、階段で繰り広げられるサスペンスについても諸々を連想せざるを得ない。

ただなんというか上手くカモフラージュされていると言っていいか微妙だが、吟味すると後味は苦いだけの作品なので、そういう意味ではホラー映画な面が強いのかな。あえて問題提起的な側面は誤魔化されているといってもいいかも。

ところで、説明するまでもないが「ソーホー」街とは、かつては性産業も盛んな歓楽街で、いまでは時代なりにはなっているらしいが、ロンドンの光と闇が同居する地域だそうだ。

ついては、エリーの地元のコーンウォールはド田舎。友人:ジャックは南ロンドン出身ということで、こちらは昔は労働者階級の住まういわゆる危険地帯だったそうだが、現在は観光地化が進んだりで割と安全になりつつある、ということらしい。ザっとネットで見た。

この友人のジャックは車持ちだし、ボンボンなんだろうけど、作中で登場する土地柄や人間性の背景がわかると味わいも増すよね。現代のロンドンの街並みが登場する作品、映画ではないが《SHERLOCK》くらいしか個人的にはアテがないが、ごっちゃりした中に楽しげな風景ではある。

年内の映画はこれで終わりになりそう。

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