《KINETTA》を観た。

ヨルゴス・ランティモス初の長編作品だとか。タイトルを見て、すわ「映画とな?」となったが、ギリシャの地名であるらしく、つまり本作の舞台だ。アッティカの西、メガラの自治体から切り離された地域だのとの説明が Wikipedia にはある。はい、理解しました。

ではあるが、「映画」の意味をとる単語「キネマトグラフ」は ギリシア語の”kinematos” を由来とするわけで、おそらく “kinetta” の語源も遠くない。ヨルゴス・ランティモスがそういう地を、初の長編作品というステップアップの地に使ったのは、それらしくて、なんか嫌ですね。シャレが効きすぎてはいやしまいか?

主な登場人物は3名で、カメラマン(?)の男、アテンダー(?)の男、住み込みの客室係の女だ。あらすじを後から読んで確認するには、かれらは近隣で発生した連続(?)殺人事件を再現して映像化しようとしているとのこと…、いやー、なるほど…、わからねぇよ! ってなりますね。

主人公の女性が働くのが閑散期のホテルということはわかる。地元民もあんまり居ないこともわかる。それ以外はほとんどわかんねぇ。作中でメタ的に彼らの存在が曖昧になっていくような感触というのはあって、それ以上のことはよくわからない。

冒頭で高級車が事故っている。おそらくカメラマンの男が其処にいて、なんか歩いて帰って墓参りしてる。で、アテンダーの男は古びた車にイライラしている。客室係の女は目玉がゴロゴロしている。記憶があいまいだが、こんな感じだ。当然のことだが、冒頭の記憶が1番怪しい。

アテンダーの男は仕事のついでに私欲交じりにロシア人の女性を抱いたりしている、よくないやつである。本作の平場においては、加虐な人間性は彼ひとりで背負っているみたいなもんだな、見たまんまとしては。再現映像でも加害者側を演じており、あからさま過ぎるんだけど、だから何だと言われると、言葉に詰まる。

あー、でも冒頭でカメラマンが墓参りしてるってことは、誰か大切な人を失くしてて、それが本作中で行われることの発端であると捉えるのが自然か? 事件かなにか知らんけど。ってか、冒頭の新車ってのはもしかして?

もうひとり、地元でファッションショーみたいなのを開催しているおっさんが一応は重要そうな人物として出てくる。女が妙になれなれしいのはキネッタの外側に連れて行ってほしがっているようにも見えるし、うーん、なんだろうな。わからん。

映像としておもしろいかはわからんが、ある日、中東か東南アジアかの季節外れの団体客みたいなのがワッとホテルに入ってくるシーンがある。すでに部屋のある宿泊客だってあんな感じには移動してこないだろうから(工事でも始まるのかと思った)、ある種の侵入を象徴的に描いているような意図なんだろうけれど。

女は冷静を装って、そこから迷路のような通路を縫って抜け出すが、前述のファッションショー男の部屋に落ち着くのであった。わからん。そこで昼寝をはじめて、今度はホテルから同じルートで駆けて逃げ出す描写がなされる。わかりやすい気がするが、冷静に考えると、なんもわからん。

よくわからん死に向きあうと危険なんだなぁという、そんな気がした。

ちなみに、カメラマンの男だが『林檎とポラロイド』の主役俳優にそっくりだなと思ったら、同一人物でしたね。あと、アテンダーの男がロシア人の女とお互いの言語での単語を言い合うゲームに興じているシーンがあり、なんかこういうの好きだよねとなった。

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