少し気になっていた『ファースト・カウ』を観る。監督のケリー・ライカートはいま最も注目の監督だそうで、U-NEXTでも過去作品が配信されはじめたとかいう情報を目にした。

監督についての小話だが、1964年生まれとのことらしく、本作を観たときに『ゴールデン・リバー』が連想された一方で、同じ女性監督ということでソフィア・コッポラの『# ビガイルド 欲望のめざめ』もなんとなく頭をよぎった。ソフィアは1971年生まれということで、ケリーよりもやや年代が下がる。

また、『ゴールデン・リバー』(2018)は19世紀のオレゴン州が舞台で、タイトル通り、ゴールドラッシュがネタの現代西部劇だ。4か国の合作というようわからん座組なんだよな。序盤の展開が重たくてウツラウツラしていた記憶もある。

『ビガイルド 欲望のめざめ』(2017)は、やはり19世紀だが背景は南北戦争で、これはバージニア州が舞台らしい。とりたてて作風が似ているみたいな話ではないが、ある特定の舞台での小さな出来事、みたいな設定と世界観は、本作と近いところはあるなと思った次第だ。

ようやく『ファースト・カウ』だが、2019年の映画とのことで、上に挙げた2作と連続している。舞台は19世紀だが、ゴールドラッシュの前のことらしく、作中で「オレゴン」と呼んだ台詞があったのでオレゴン州のことかと思ったが、Wikipedia を読むと「オレゴン・カントリー」は、現オレゴン州を中心にした太平洋岸北西部の広域を指すらしい。

本作、脚本に参加している Jonathan Raymond による 2004年の小説『The Half-Life』が元ネタらしいけれど、その内容までは調べきらなかった。画面はアスペクト比が 4:3 で、久々にこの画面で観るなという印象でもあり、作中の出来事の寓話らしさが深まったかなと、個人的にはそのように受け取った。

冒頭、およそ現代のようだが大きな川岸の土手の木立ちで散歩中の犬が何かを発見する。飼い主の女性が一所懸命にそれを掘ると、寄り添った遺骨が2体、見つかる。

素人ながら、たとえば冒頭では遺骨を片方だけ映し、エンディングで2つの遺骨をあらためて映すみたいな方法をとるだけでもエンターテインメントとしてはおもしろくなりそうだと思うが、この監督はそういうことをしないらしい。逆にそこがこの監督の撮り方あるいはモットーであり、この監督の作品が残す余韻なんだろう。

事前情報を仕入れずに観にいったので、もっと牛が活躍するのかなと思っていたのだが、そうでもなかった。

メリーランド生まれで身寄りのない男、フィゴヴィッツ(?)、通称クッキーと呼ばれる料理人と、キング・ルーと呼ばれる中国人のコンビがとある開拓村でやんちゃをやって追い詰められていく。

このコンビの友情と呼べるのかもわからない関係性(もちろん利害関係は前提にある)、リアリティがあるのかないのかよくわからない開拓村の状況(あんまり資料がないとか)、その村のリーダー的な仲介人(だっけ?)の微妙な滑稽さ、などなどが地味に沁みてくる。序盤、ちょっとうつらうつらしてしまったけれど。

エンドクレジット、登場人物順にリストされていたが、キャストに牛がリストインしていた。名前まで読み取れなかったのが悔しい。また、最後の方に登場した先住アメリカンに Hawaiian という記述があり、どういうことなのかなーと思った。

結論から言うと、以下のインタビューを読んだら解決した。

裕福な白人の村長から始まり、先住民であるサンドウィッチ諸島(現ハワイ諸島)から来たインディアンの酋長、その妻たち、使用人たち、中国人移民のキング・ルー、そして、下層に位置する職業の料理人クッキーなど、

ということでした。へぇ。

Comments are closed.

Close Search Window