2022年の年末、《未来惑星ザルドス》を観た。4K リバイバルの予告をみた時点では「ふーん」という程度だったが、時間が合ったのでチケットをとった次第だ。

印象では、かなりぶっ飛んで抽象的な内容かと危ぶんだが、割とまっとうな SF で、拍子抜けというか最後のほうは普通に楽しめた。レイトショーだったのもあってか序盤は眠気が勝ってしまい、危なく熟睡コースだったが、なんとか睡魔も退けられた。

主演のショーン・コネリー、 007 シリーズの引退直後くらいなのかな? 奇妙な映画に出たもんだが、時代的にはこの手のファンタジー映画なんかに名のある俳優が出演するのもおかしくはないのか? というか、バキバキの売れっ子俳優がシリアスな映画にも MCU にも出演する、みたいな状況と感覚的には大差は無いのかもしれない。

英語版の Wikipedia を読んでいたら、当初はバート・レイノルズという役者が予定されていたが彼が降板、ちょうど仕事が空いていたショーン・コネリーがアサインされたという経緯らしい。2 人の写真を比べると、ダンディーな髭面中年男性という雰囲気が似てるので、ちょうどよかったんだろう。ていうか、方向性は、役者ありきではなくて役のイメージを重視したと確認できる。

ちなみに、監督のジョン・ブアマンは今日現在にて存命らしく、降板したバート・レイノルズ、代役のショーン・コネリーと、順に生年は 1936年、30年、33年となっているようなので、彼らはほとんど同年代なんだね。同英語版 Wikipedia の記載によると監督は『ロード・オブ・ザ・リング』の映像化がぽしゃって本作に取り掛かったらしいので、なんともはや。運命とは数奇なものだ。

作品の内容は、ポストアポカリプスというよりは、全体的には人類の進歩の袋小路が主題的で、身も蓋もないけれど、日本版タイトルの「未来惑星」が半ばネタバレしている。おいおいおい。

ざっくり 1970 年代の後半には決定的に有名な SF 映画シリーズが生まれまくってることを考えると 1974 年の本作は、いろいろな事情があるにせよ過渡期的な作品だったのかなという気もするが、実際にはどうなんだろう。小説分野でもの古典的な名作 SF が量産されている時期だろうし……。

しかし、この作品、カルト的な人気があるらしいけれども、テレビ東京の午後のロードショーや BS のどこかの枠でやってそうなくらいの雰囲気はあった(後述)。問題があるとすれば、衣装の奇抜さや、性的なテーマがやや前面に出過ぎているきらいがある点で、バストトップもチラチラ目に入るし。というかそれが本作の人気の限定性の根本的な問題だろうな。

“The gun is good! The penis is evil!”

という台詞が象徴するような作品を、気軽にお茶の間に流せるものではない。

全体的なビジョンとしてはよくある SF なものの、性愛だけを否定する作用が強く働いているのは印象的で、超未来では人類の性差自体が無くなるような類の作品はいくつか知っているが、性愛だけを強く否定、そのうえで、しかし、鉄砲というような男性的なシンボルを並べて肯定するのが、本作のユニークさというか、よくわからない。フロイト的なものをあえて対立させたみたいな話なんだろうか。なんだったんや。

ところで、クライマックスのシーンには、やはりカルト的な人気を誇るゲーム『リンダキューブ(アゲイン)』のエンディングが連想されたけれど、本作にインスパイアされたということはあるのだろうか。

とかとか。細かいところまで話題は尽きない作品ではあった。

で、下記のレビューを読むと、地上波で放送されることもあったらしい。

昔はこれが地上波で普通に放送されていたのだから精神的に豊かな時代です。

未来惑星ザルドス くそげーまにあさんの映画レビュー|Yahoo!映画

Amazon のレビューを読むと、水曜ロードショーだったとか。こうして情報をみると、なんとなく既視感があった気もするんだけど、何とも言えぬ。

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