映画:《海外特派員》

ヒッチコックをできるだけ見ていこうシリーズの 4 作目《海外特派員》である。サスペンス、ロマンス、アクションがふんだんに盛り込まれているが、盛り込まれすぎている。途中でやや飽きる。特にロマンスがよくわからない。時代や習慣への無理解による違和感かもしれぬが、ヒロインと主人公との心の交流がいい加減というか、大雑把というか、適当でないように思えた。「他の作品も似たようなものだろう?」と言えるが、ロマンス描写が多めになっていたからこそ気になる。

とはいえ、おもしろいところも多々ある。

強行犯を追う最初のシーン、路面電車が行きかう狭いスペースでの攻防がおもしろい。こういう狭い空間を生かすのが本当に上手いんだ。これは、誘拐されたヴァン・メアと邂逅する風車小屋の中も同じく、狭い空間の上下や抜け道、裏道を生かしてハラハラドキドキ、ヒヤヒヤさせられる。

また、終盤でヴァン・メアが尋問されているシーン。灯りの向こうの悪人たちや記者をヴァン・メアが逆光のなかで眺めるが、この状況の恐ろしさの表現が見事だ。事の大きさを理解していないような女性や、本当は彼を助けるべき立場にいるはずの記者までが、ヴァン・メアにとっては敵のように映える。記者に限っていえば、ヴァン・メアを助けることが必ずしも彼の目的であるわけではなく、戦争が起きるか起きないかという瀬戸際の状況をメシの種にする人間であり、決してヴァン・メアと同じ側の人間ではないということが暗示されているようでもある。

最終幕の飛行機の墜落シーン、どうしてここまで恐ろしげに描写できるのか。機長と副機長が水面ギリギリまで軟着水を目指す状況が、古い映画でどうしてこんなに緊迫して描けるのか。そこに新古の垣根はないのかもしれないが、それにしても不思議だ。