2023年の年始、配信サービスを漁っていてサジェストされた《ウォンテッド》を観た。

会計処理かなんかの事務作業に従事してる冴えない男が主人公だ。実は彼は、西洋に古くから続く暗殺家集団のエースの息子で、暗殺の才能が申し分ないということがザックリと語られる。

で、その彼の親父が殺されただの、お前の命も危ういだの、なんやかんやあって裏世界の抗争(というほど大したもんには終始見えない)に巻き込まれる。

この暗殺家集団は「フラタニティ」を名乗るが、世界を正しい道へ導く全自動織機だとかがアメリカはシカゴの外れにある工場に鎮座している。なんでや。ヨーロッパからわざわざ輸送したんか?

動力もなにも不明のファンタジーな全自動織機は暗殺対象の氏名を暗号で示すのだが、なんでわざわざ暗号化しているのかも、サッパリわからない。ツッコんでもキリがない。このマシンが登場した時点でようやく本作の方向性がわかったけど、まぁおもしろいよ。大したことは無いけど。

私からしたら、この映画のおもしろさは、2点あった。

  • うだつのあがらない人間の根っこからの意識改善する
  • なんか訓練を積むと銃弾の弾道が滅茶苦茶に曲がる

負け犬根性が根を張った主人公、こんなんじゃ一流の暗殺者、もとい戦う人間としてやってけません。ということで、性根を叩き直す展開が中盤の入口にある。実際のところ本作でヒートアップするのは、この部分が最高潮といっても的外れでもなく、なんとなく《ファイト・クラブ》を想起させられるテイストがある。といっても、《ファイト・クラブ》はあまり内容を覚えていないが、とりあえず身体性(直截な暴力)でもって立ち向かうのが大事だよっていうメッセージ性ね。これがおもしろい。

で、もうひとつだが、この作品世界ではめっちゃ鍛えると曲線銃撃ができるらしい。選ばれた戦士(あるいは限界まで鍛え上げられた場合)のみかもしれない。とにかく銃弾が曲がる。常識的に考えて有り得ないが、なんか雑に調べると向こうの TV番組ではワザワザ検証したケースがあったらしい。が、もちろん、曲がらない。

この端的だけど、大胆な嘘が本作のスパイスとして奇妙にうまく作用していて、鍛え上げたとて超人というわけでもない登場人物たちのアクションにエッジを与えている。巧いのである。

ということで、上映当時にどれだけ話題になったかはしらんけど、思いのほか発見が多くて面白い作品だった。なお、これは全然気づかなかったが、完全に《マトリックス》フォロワーでもあるようで、つまるところアレンジがうまい脚本だったのだなとも。原作はアメコミなんだもんな、これ。

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