『金曜日はアトリエで』が 4 巻で完結していた。2 巻まではマンガを漁っているときに読んでいて、3 巻以降は忘れていたのだが、完結していたので読んだ。これは面白い作品で、とにかく面白いのだ。

出会って突然ヌードモデルを務めるという突飛な展開が面白くないわけがないが、この画家と女性の関係がなんともよい。

作品のモチーフが魚であったり海であったり、そこに理想の女性像が求められたわけだが、画家にとって、それが彼女だった。たしかに、モデルの女性が人間としてステキであることが徐々に明かされるが、出会って突然、なぜなのか、画家は彼女を発見した。よくわからん。画家の審美眼がそれを見抜いた? という発想で終わらせたくもないが。

後半の展開および彼女のプロフィールはどれだけ予定されていたのか不明だし(もともと読み切り型の短編であったとのことだ)、Amazon のレビューでも「後付け設定だろ」という指摘もあったが、彼女は自らを海の底に置いていた。そこが画家に直感された。言ってしまえば、わかりやすい。だが、これを運命かと言えば、そうだろう。

大筋は画家とモデルのフワッとした不慣れで不可思議な恋愛模様が描かれる。題材の魚をモデル仕事の終了後に夕飯にして食べるなんてことが実際にあるのだろうか。知らん。

金曜の夜だけ、こういう特別な関係が、1 年くらい続いたのかね。季節感があんまりないのでよくわからんが、モデルの復活の過程を考えれば、おおよそそんなもんかな。

完結まで読んでからひさびさに 1、2 巻を読み返すと、絵柄が割と変化していることに驚く。これは作者の浜田咲良が初連載であるっぽいことも影響しているが、変化が楽しい。

ついで、序盤の関係性は割と中終盤と逆であって-順序的には話の進展とともに逆転したことになるが、これも味わい深い。当初の画家はただの自惚れ屋だし、モデルは序盤は割と彼に警戒的でその辺の人間関係に自覚的だ。

こういう変化も含めて、面白い。

単純にダブルワークが彼女の生活や仕事に、新しい人間関係や彩りを与えたというのは、一般的に希望があっていいなと。

画家の担当の平野君は実在したら単純にイヤなやつだなと思うけど、作品にはほどよいスパイスとなっていた。テキトーに幸せになれば? と思う。

人類の歴史にあらたな佳作が誕生した。

あー、後半はそうでもないけど、当初の絵柄にはなんとなくテリー山本に似たところを感じた。寿司屋の同期が絡むエピソードの作話も似たような雰囲気を見た気がする。

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