くたびれて|《空也上人と六波羅蜜寺》

東京国立博物館で展示中の《空也上人と六波羅蜜寺》へ出掛けた。2022 年 5 月 8 日まで開催されている。大河ドラマと関連する企画なのかよくわからんが、老若男女さまざまな顔ぶれが参観していた。

京都は六波羅蜜寺にある空也上人像、同じく仏像 14 点および資料が東京にやってきた。50 ほど年ぶりらしい。トーハクに仏像が来るときは大抵は本館の正面玄関から直の特別 5 室が使われる気がするが、いつも暗いというか、とりあえず明るくはない。それはいいんだけど、今回は特に空也上人像の前面の明暗が良くは思わなかった。

入口を迎えたのは 地蔵菩薩立像 で、ガラスケースに入っている。接触を避けるためというよりは、転倒防止が主目的なのかな。大きい。11 世紀のものだそうだ。後ろの背光かな、右下の部分だけポッキリ欠けていたが、それ以外はキレイなもので、それはそれは美しかった。

地蔵菩薩像はもう 1 体あって、運慶作とされる 地蔵菩薩坐像 であった。お地蔵様の坐像ってあんまり見ない気がするもんだけど、流石運慶と言っていいのかしらぬが、凛々しい顔つきが見事なものだった。

入口の地蔵菩薩のうしろには、閻魔王坐像 と 十王図 (3点)が並べて展示されていた。どちらも 13 世紀ほどのものらしいが、後者は中国からの舶来品のようだ。で、そもそも六波羅蜜寺だが、京都の五条通を東に、中央から鴨川を渡ってすぐのエリアにある。この辺はかつては生きた人間のエリアではなく、死者に繋がるとされた地域だったらしい。墓地とかか。閻魔王坐像や十王図があるのは、この関連らしい。

十王図 の隣には 地蔵菩薩霊験記絵巻断簡 も展示されていた。これ、よくわからんが、下記のリンク先の絵巻と同一のネタ元だろうか。展示されていた六波羅蜜寺所有の断片は、地蔵像が草鞋を履いて歩いたというエピソードらしい。また、下記のリンク先の説明によれば、東京国立博物館にも所蔵品としてあるらしいが、それは今回は展示がなかったように思う。

出口付近には、夜叉神立像が 2 体あった。これらもガラスケースに入っていた。彼らは、作られた当時は山門の脇に立たされたらしく、傷みもそれなりにある。処分されずに置かれていた状態が今日まで続いたようだ。つまりこれらは消耗品だったと思うが、そう思うと切ない。あんまり造形にこだわりも無いようだし、なんなんだろうね。でも、可愛かった。言ってはなんだが、トーテムポールのような印象もある。

空也上人像、あるいは運慶、湛慶、清盛

メインディッシュの空也上人像、圧巻ですね。ガラスケースはいいのだが、ところどころ汚れているというか、部屋の暗さと相まって、ディテールがよくわからない部分があった。そうはいっても、スゴイ。

まず姿勢がスゴイ。歩き疲れているんでしょう。へっぴり腰のようになっている。前傾姿勢だ。纏った衣装も草臥れているようだけど、それでいてしっかりした材質のようにも見える。仏像なり四天王像なりの衣は美しいか、凛々しいか、雄々しいかといった具合だが、空也上人の衣は風雨に耐えて、使い古された感触がある。

また、二の腕の筋に血管があった、ように見えた。木像でこういう表現が出来るんだなと驚く。足の脹脛あたりから踝までの表現も絶品で、空也上人の行脚の苦労と大変さが滲む気すらしてくる。

口から仏様がポワッと浮いているのはユニークだが、距離と大きさの関係でいまいち分かりづらく、仕方がない。拡大鏡を持っているひとが居たけど、ああいうのが無いとダメだね。

伝運慶、伝湛慶、伝平清盛とされた坐像が 3 点並んでいた。これも好かった。というか伝運慶、伝湛慶の坐像が好かった。最近は誰某とされるポートレートにおいては、よほど確定とされない場合は「伝」と付けることが多いらしいが、此れはどうなんだろう。ほとんど彼ら自身とみて問題パターンなのではー平清盛は別ですけど。

彼らは、おそらく極端には美化されておらず、当代の彼らの姿が像となっているようで、老いて、痩せ細って、それでいて静謐さを感じさせる佇まいで会った。現代アートでも木像ってあるし、仏像なんかもほとんど木像だけど、今回の空也上人像と伝運慶、伝湛慶のように、それなりの生々しさを体感させられる造形はあんまり記憶になく、新鮮だ。

その他、薬師如来坐像、四天王像があった。ところで、六波羅蜜寺の本尊は十一面観音菩薩だそうで、これは国宝らしい。ちなみに、特別展の出口を出て、常設のエリアに向かってすぐに左折すると、トーハクに収蔵されている十一面観音菩薩像が目に入る。具合がいい。

展示場で手に入る目録、表面加工が入っている紙だったのかな。上質感があったね。空也上人像を 6 面から映した状態の挿絵が入っているのもよかった。この目録は現時点では、トーハクの公式案内から PDF が手に入るので、よい。

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本館の常設展では「博物館でお花見を」という企画で、桜をモチーフにした作品にマークがついていた。面白いですね。硯箱、化粧箱などの桜の文様は絶品でしたね。

季節的に、雛人形の展示もあった。これ、毎年のこの時期に展示されているようだから、以前も見たかもしれない。江戸時代の豪商:三谷家から寄贈された品々がほとんどだが、今回は「紫宸殿」の精巧さに驚いてしまった。
下記のリンク先に詳しい。

平成館で開催されているポンペイ展を横目に、東洋館にサッと寄って帰路についた。