ヒッチコックマラソンです。『知りすぎていた男』《The Man Who Knew Too Much》を観た。のっけから海外、しかも合衆国でも欧州じゃないので少しびっくりしたが、カサブランカを経由してマラケシュへ観光に来ている家族という設定か。

夫は医者で、妻は世界を巡った元歌手のスターだったらしい。なんやかんやあって夫婦と息子が事件に巻きこまれ、息子が誘拐されて、2人はロンドンまで追いかけていくが…。

ひさびさに感じる規模感と妙な間延び感があるなと思ったが、これはイギリス時代の作品『暗殺者の家』のセルフ・リメイクでもあるらしい。なるほど、その辺の影響もあるのだろうか。今回の私の走っているヒッチコックマラソンでは、『暗殺者の家』は鑑賞できていないので、その辺の都合はわからない。

自分が感じた間延び感だが、主人公らが息子の救出を急いでいる割にはややマイペースだったり、ロンドンの警察がかなり間抜けに見えたのが該当する。これはおそらく原作の脚本から動かしがたいところだったのではないかな。

さて、まずは、マラケシュでの異文化感がよかった。これはさすがに現地のロケだよね? チキンを食べるシーンが出てくるのだが、『泥棒成金』と異なり、これはちゃんと食べていたような。左手を使ってはいけないというルールに翻弄される主人公はちょっと面白いね。

マラケシュの月夜を映したカットが本作では 1 番好きかもしれない。

ところで本作の冒頭は、ホールで演奏される楽団のシンバルが鳴らされるシーンから始まり、「この音を耳にしてしまった家族を襲う危機が…」みたいなメッセージがなされる。この仕掛けがうまく機能していたのかは微妙かもしらん。

ロンドンでは現地を訪れていた他国の大統領が、コンサートホールで暗殺されんとしていた。本作のクライマックスは前後があり、その前半がここのシーンだ。大きなホールにめちゃくちゃ大人数の観客、オーケストラ、合唱が入っており、圧巻の人数だ。

加えて、舞台設定とか狙撃のシーンなんかは、いくつもマネされていそう。ベタだけど最近の映画としては『テネット』の冒頭シーンなんかが連想されましたね。

音楽がめちゃくちゃ重要な要素なんだよね

まずは、このコンサートホールで演奏されていた曲目についてだが、インターネットのありがたいことに、詳しく説明してくれている個人サイトがあった。原曲はオーストラリア出身の作曲家、アーサー・ベンジャミンの《cantata the storm clouds》という曲らしい。

もうひとつの重要な音楽が《ケ・セラ・セラ》で、この作品のために制作され、歌われていたことも知らなかったが、なるほどなぁ。ミュージカル映画の系譜はあまり分からないのだが、こういった要素の取り入れなのかね。ドリス・デイの歌いっぷりがまさしく歌姫のそれで、美しい。

この曲が、クライマックスの 2 つ目の山場で活躍するわけだ。

子供がまともに登場する

『ハリーの災難』でも登場する子供にそこそこの役割が与えられていたが、ヒッチコックのサスペンス作品に子供がまともに登場して扱われるのは初めてなんじゃないだろうか。見落としがあるかな? これも時代の流れなのか?

不幸中の幸いというか、誘拐された子供はそれなりに丁重に扱われるのだが、誘拐犯側の女性諜報員も少年に同情してしまって、逃がそうとするんだよね。そこで母と子の暗号として《ケ・セラ・セラ》が機能するのなんて、上手いね。大使館の夜会で歌うには場違いな曲だったのに、結局は皆が聞き入ってっているのもオツだった。

タイトルの「知りすぎていた男」というのは、主人公のベンのことなのか、殺されたルイ・ベルナールなのか、よく分からんよな。ベルナールは最初、暗殺チームをベンではないかと疑ったということだが、さすがに子連れで偵察になんて訪れないよな(笑。 こういうところもちょっと旧作っぽさがあるような気がする。

以下が音楽まわりの情報で参考になったページだ。

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