読書:『地球へ』

竹宮恵子の『地球へ』を読んだ。恥ずかしながらというか、竹宮恵子をちゃんと読んだのは初めてで、本作も圧倒的に支持されていると認識していたが、なんとなく摂取する機会がなかった。ところで先日、たまたま Kindle 版が超安価で販売されていたのですかさず購入し、その晩に読んだ。

トォニィがよい。人類、ミュウ、そして完全なミュウとしての第三極として誕生したナスカ生まれの純粋なミュウだ。何がよいというと十分に理性的でかつ情をもった人間として育ったことが描写されていることがよくわかるところが好い。幼少のトォニィがキースを敵視し、爆発的な成長を見せた際、ジョミーは戸惑いを見せていた。精神年齢が若い一方であまりにも強大な力に振り回されるというところだが、危ういキャラのまま終わることがなかった。そのバランスが見事ではないか。

大人になり(身体的に)人格を持ったトォニィが物語の前面に出てきたとき、わちゃわちゃとやってジョミーを困らせる役だろうかと少し不安だったが、あまりそうではなかった。トォニィは後続の仲間たちのリーダーでありつつ、ジョミーの葛藤にも理解を示そうともする。いくつかの状況で思い余った行動をするが、決定的な悪手としては描かれない。思慮が足らない人物ではない。それでこその新人類である。人類やミュウを放って宇宙に飛び出したっていいのだが、彼はそうしない。