『おんどりの鳴く前に』を観てきた。ネタバレを含むぞ。
ルーマニアの映画らしい。長編2作目かなんかの若手監督だそうで、よいですね。2022年の映画らしいので、ちょっと前だな。英題は《MENS OF DEEDS》だそうで、辞書的には「行動してから考えるひと」というのが最初にサジェストされますね。それが妥当かはしらん。
しかし、もとのタイトルは《Oameni de treaba》だそうで、「誠実な人」だとかの意味があるらしい。もう少し言うと、”Oameni”が「人びと」で “treaba” が「仕事」を意味し、社会的な信頼的な意味においても「仕事ができる人びと」というニュアンスも含むらしいとのこと。へぇー(薄ら笑い。
なわけで、邦題は捻られているが、かっこよくていいですね。私は好きです。その比喩するところもおよそイメージがつく気がするが、いたずらに言語化することもないかなと思う。ぼやけたおんどりのビジュアルも、なんだかなぁと思っていたが、そう考えたら悪いことない気がしてきた。
まずは、世界から背を向けている警官イリエ、それを演じたユリアン・ポステルニクという俳優に拍手したい。ルーマニアの地は踏んだことはないが、居そうだもん、夢破れた中年の草臥れた、酒に強くもない、明日のわたしみたいな男。劇中でシャキッとしてるシーンがほとんどなくて、もう最高に最悪。愛おしさすら湧いてくる。
ルーマニアの田舎の問題とか、ルーマニア社会の問題とかいうが、別にそれに限った話ではなくて、権力と経済の構造がぶっ壊れた共同体の話ってことで十分だろう。威勢のいい若者がつっかかって返り討ちにあい、イリエ自身も萎びてはいるものの最低限の人間性は持ちあわせているもんだから、ようやく話は進展する。
すわ、クライマックスである。
仕事するぞと気合の入ったイリエ、兄貴の前で泣くイリエ、別れた妻を慰めるイリエ(直前まで二日酔いでグロってたイリエ)、月明かりに悪い顔を覗かせるイリエ、貴方はどのイリエがお気に入りでしょうか?
そして最後に、イリエが自分の顔をじっくりと眺めて、「思ったよりも悪くないな」のように言う。辞世の句とも言えるかもしれない。さんざんしょぼくれた顔を披露してくれた彼だが、彼自身としてもその人生の竟としては、そんなに悪いものでもなかったのかもな、のように呟くのである。
ごく雑に言えば、ヴァリの復讐もできたし、モナへ家を残すこともできた。故郷の必然悪をぶち倒した。十分じゃないのってか。と、タイトル回収されるわけだだが、本当にそれでいいのかしら…。
水面に映る彼の顔はたしかに満足気であったし、洪水の残した汚物は彼によって洗い流されたのかもしれないが、向こうの世界にはイリエはいけない。そこは綺麗な水だけがいける楽園なのであった。
Last modified: 2025-02-18