誰が視聴率を気にしたのか|《ハケンアニメ!》

《ハケンアニメ!》を観た。フォローしている人たちの絶賛が背中を押してくれた。最近、このパターンが多い。配信に来ても見なかったろうから、この流され方は正しい。そう信じるしかない。

いや、よかったんじゃないですかね。よかった。かなりいい。すごくいい。めちゃくちゃいい、の目前くらいまでよい映画だった。もっとみんな見てほしい。

原作は 2014 年の辻村深月による小説だ。原作では、映画の主人公として描かれた齋藤瞳(吉岡里穂)のほか、脇を固めた行城(柄本佑)プロデューサーやライバルとなった王子監督(中村倫也)のエピソードもそれぞれ独立していたらしい。

ところで、辻村深月といえば『ドラえもん のび太の月面探査記』(2019)の脚本であったが、なるほど、もともとアニメ制作に造詣があったんだなとなった。

監督の対比をみる

新作アニメ『サウンドバック』の監督に抜擢された斎藤瞳は、社会人経験ありの業界人という珍しい経歴のようだが、具体的にはアニメーターを経て監督になったということでいいんだろうか。作画してるっぽいシーンもあるけれど。

一方のライバル役に据えられた『リデルライト』の監督:王子千晴は、絶賛された前作からのカムバックという立て付けであった。って、数年くらいはギャップがありそうだけど、何をしてたんだろう。

同じ監督業ではあるものの、初監督に苦しむ彼女のもがくさまと、復帰作で全力全身のクリエイティビティを発揮できるか苦しむ彼の葛藤とが、そこそこ絶妙に対比されている。そこを意識させられることも、あまりないが。

「覇権を競う」というタイトルに適った、彼らのアニメ放映時における周囲が注視する展開は、つまりは主に視聴率なのだが、どちらの監督も最終的には、そんなことは気にしちゃいない、いられない、という点で、新人だろうが天才だろうが、同じ立場だ。

ところで作中で『サウンドバック』は「サバク」と省略されていたけど、これには違和感大でして「サンドバ」とかのがよくない? とずっと考えていた。

プロデューサーの対比をみる

「サバク」のプロデューサーである行城は、斎藤の面接にも同席していた様子からして、純正コースのプロデューサーなんですかね。少なくとも会社の体制寄りの立場が強いことには変わりないだろう。

「リデル」の有科さんは、制作進行上がりだそうなので、彼女は現場寄りなんだろう。なんなら予告映像の制作も指揮できちゃうのである。彼女が王子監督と体制との板挟みにあうのも、多分にフィクション然としてはいたが、なるほど面白かった。

作中作品の類似をみる

作中で制作、放映される 2 作品『サウンドバック』『リデルライト』もよくできていた。おもしろそうだった。布陣も豪華で笑ってしまった。

「リデル」が監督の訴えていた展開をそのままなぞらなかったのは何を表しているのか。ざっくり言って彼の創作も単独では無しえないことの結果なんだろう。いいと思います。面白いなと思うのは、監督が選んだこのクライマックスは、現実の現代に選択されがちなルートだと感じられた点だ。

「サバク」は逆にわかりづらい結末を選んだということであった。開かれたエンディングというやつだ。そこに至るには、冒頭での脚本家とのいざこざが解消されたのが個人的には 1 番好きな展開だったが、ようやく監督の覚悟が開かれ、そこに作家性の端緒のようなのが見えたというところか。

この作品ら、作中作品なだけあってか、形式がわかりやすくなっており、方や主人公が 1 話ごとに 1 歳ずつ年を取っていくとか(斬新でおもしろそう! あの映画が思いつくけど)、あるいは 1 話ごとに新ロボットになっていくとか、仕掛けがシンプルだ。それでいておもしろそうなのは流石だ。

その他のことなど

  • 序盤のエピソードで並澤さんが描かされたカバー表紙のイラストに藤島康介っぽいテイストを感じていたら、王子監督の台詞に「ベルダンディー」の名前が出てきて、こだわりを感じた。
  • 王子監督の台詞には「草薙素子」も登場したが、此方はアニメーションが現行でも新作発表されているのがまた面白い。
  • 以前、細田守監督の執筆環境が狭いワンルームの缶詰部屋であるとドキュメンタリーで見たことがあったので、王子監督の執筆環境が真逆なのはユニークだった。映画の見せ方としては正解だろうけれど、気が散りそうだよね。
  • ナレーターに朴璐美さんがクレジットされていたが、どこで喋られていたのかわからなかった。残念である。
  • この映画、若者向けだとしたらテレビではなく、SNS を中心に盛り上げなくちゃならんと思うのだが、プロモーションはどうなっているのか。上映前の予告のラインナップなんかも違和感があった。
  • 「サバク」が音を捧げるついでに、別のものまで捧げなきゃいけない設定になっていたのが気になっている。そこにあまりオリジナリティも感じないし、アレはなんなんだろうね。

リンク

パッと見ただけだけど、anan NEWS の媒体の記事が検索で目に入ったのでリンクだけしておく。やはりターゲットがよくわから、これは吉岡里帆のアレなのかな。そういうことでもなくない?