映画:《ドラえもん のび太の新恐竜》

《映画ドラえもん のび太の新恐竜》を観た。映画ドラえもんシリーズに私が復帰したのは、2 作前の《映画ドラえもん のび太の宝島》からであった。それは新海誠とタッグを組んだ川村元気が脚本した作品であって、今作も「のび太の宝島」以来の 1 作ぶりの脚本として川村元気が担当している。同じく、監督も「のび太の宝島」の今井一暁ということだ。

普段、感想を残すときはなるべく心に残った良い点を、気になった点があれば自分なりに消化できる解釈を残そうと心がけてはいるが、思い入れのあるシリーズだけにどうしても心残りも多い。まぁ、よかったなと思った点からあげていきたい。

よかったなと思った点

ちょっと近未来を感じる広告スクリーン

冒頭の恐竜パーク、のび太がティラノサウルスにビビって騒いだ顛末でカメラが施設の天井方向に移るが、そこにある曲面スクリーンには夏の清涼飲料水の広告が流れていた。おそらく実現可能な設備で、新宿のヤマダ電機の施設に付いてるスクリーンのようではあるが、こういう近未来感を感じさせる描写はおしなべて好き。サイバーパンクというか『ドラミちゃん ミニドラSOS!!!』を観たときのワクワク感に近い。

豆腐売りとスマートフォンの合わせ技

リヤカーを曳いた豆腐売りが夕方に野比家前を横切っていくカットがある。設定は練馬区だったと思うが、さすがに現代には居らんやろ。いるのかね? 練馬には。まぁいい。その一方で、公共の場で異変が発生すると通行人がこぞってスマホで撮影するシーンが出てくる。完全にワザとなんだけど、時間-時代の感覚を揺るがせてくる。

これが本筋の展開-恐竜時代へと遡行するストーリーへの記号的な伏線として描写されているなら細やかながら面白いけど、誰が気がつくのか、誰が気にかけるのかという疑問も湧く。だがまぁ、誰かが気がついたら面白いよなと思うし、こういう表現は嫌いではない。ただまぁ、豆腐売りが日常空間に存在した世代って、本作のメインターゲットとなるキッズの親世代でもなく、もっと古いよな。

タイムマシンやっぱりカッコいいわ

そもそもが「のび太の恐竜」のレールに乗ったストーリーであり、双子の恐竜の育成物語にも感じたところも特になかったが、タイムマシンに乗り込んで過去に移動するシーンは個人的には盛り上がった。というか、全体でいえばピークだったような気もなくはない。

すんなり移動できずに、やや時空の乱れみたいなのに巻き込まれるところもよいし、ドラえもんのタイムマシンの表現のスタンダードからはちょっと離れた、途方もない時間を遡ったという雰囲気の、目的時間への到着時の描写は特に好きだ。

「魔界大冒険」や「日本誕生」でもそうだが、やはり時空間という異次元の特殊さが、メインではないにせよキッチリ表現されて生かされているのは気持ちがいい。

ジャイアンとスネ夫のコンビは良し

映画の原作(大長編ドラえもん)があった頃から、ジャイアンとスネ夫が-あるいはしずかちゃんのケースも-別行動をとることがある。本筋を解決するためのヒントを別ルートで回収したりといった展開が多いけれど、なんのために別々になったのかよく分からないシナリオに収束していることも少なくない。

今作はこの操作が割とうまくいってたという印象があり、ジャイアンとスネ夫の掛け合い自体も笑えた。ジャイアンの体形のデザインがかなりデフォルメがかかっており、カートゥーンっぽさすらあったのも、いろいろと動かすための工夫の末だったのだろうと。

気になってしまった点

OPが無いでない EDが地味でない?

前作の OP が非常によくできていただけに残念だった。OP がカットされた理由はよく分からないが、尺の都合だろうか。 TV アニメの OP が新恐竜仕様になったとのことなので、兼ね合いもあったのだろうか。かなりガッカリした。個人的には本作最大のマイナスポイントです。

加えて ED が地味ではなかったか。本作はかなり強くキッズ向けに振っているように思えるのだが、ちょっと思わせぶりなだけの、のび太が1人で迎えるラストといい、地味な ED といい、他の箇所にも言えることだが、ところどころ妙に大人向けというかキッズ向けに徹せていない点がある。ED のあの描写、脚本家からはあの作品を連想してしまうし、好みではなかった。ワクワクの終わったあとの余韻が欲しかった。

突然に逆上がりの練習をするな

双子の恐竜の片割れの運動神経が悪い。彼がのび太の分身で、彼の成長と別れまでが描かれる。キッズ向け映画の典型とも思わないが、のび太の葛藤や問題の解決法もピンとせず、悪い言い方をすれば子供だましではなかったかなとも思う。

たとえば恐竜が飛べるようになるまで僕が指導すると言ったのび太だったが、その方法というのは「とにかく頑張れ、みんなできてるのにできないはずがない」みたいなメッセージに基づく、悪く言うと根性論っぽい、反復練習のみだ。こんなのは、現実社会において延々と批判されていたメンタリティ、メソッドそのもので、それこそ本来ならのび太が正面切って反抗してきた対象でしょ。

こういうのをキッズに見せるの? なんなんコレ、という。

お前はどこのピー助じゃい

これは完全にファンサービスなんだろうけど、少なくとも原作映画か 2006年版の視聴者向けというのは確かで、やはりターゲットの軸がよく分からない。14年前の映画を予習済みのキッズ向けということなのか。

また、もともと考えても仕方がないドラえもんの世界観の整合性に、さらに余計なノイズを与えられたのも気持ちよくはないが、これは完全に良くないオタクのやっかみではある。

タイムパラドックスはどうした

同じ藤子・F作品ではあるが、ドラえもん原作には採用されていない道具が登場する。そこはいい。それにしたって、せっかくここまで話を単純化したというのにギリギリでタイムパラドックスのややこしい話題を持ち出すのは厳しいし、当該道具の効能も、あの説明だけでは大人でも分からないだろうし、ことさらキッズにはチンプンカンプンだろう。

ついでは、どういう意図か分からぬが、ざっくり言って「竜の騎士」のストーリーをなぞった展開が披露されるうえ、どうしてそれが許容されるのか、タイムパトロールの対応も疑問だらけで設定がガバガバになって終わる。

どうにもこれは「すこしふしぎ」の範疇ではないような気がしてしまう。