時代劇はほとんど鑑賞しないが、なんとなく劇場で《居眠り磐音》を観た。そのときの感想を今になってまとめた。

松坂桃李が出演している作品は、《ユリゴコロ》(2017)と《不能犯》(2018)くらいしかまともに鑑賞したことはなかった。一応のヒロイン役、木村文乃は《羊の木》(2018)くらいしか見たことがなかった。だが、よくよく辿ってみるとこの2名はTVドラマ《サイレーン 刑事×彼女×完全悪女》(2015)で主役を共演していた。家族が鑑賞する傍らで私もたまに目にしていた。また、同作でのヒール役、菜々緒を加えてみんな同年齢なんだね、という感じである。

本作のストーリーの前提を大まかに残す。

主人公の磐音は、同藩の若手仲間である琴平、慎之輔とともに九州は豊後に帰京した。江戸への出向と修行を終え、藩を盛り上げていくはずだった3人。だが、悪玉にハメられた同志たちは次々に非業の最期を迎え、磐音は江戸で浪人となって生きることとなったのであった…。

4つの殺陣

大きくは4つあったと記憶している。時代劇映画で演じられる殺陣の数の大小などはわからないが、満足感は高かった。どれも意味づけがしっかりしているうえに、ワチャワチャせずに緊張感がある。個別に感想を記そう。

琴平と慎之輔

殺陣と言っていいのか。正気を失った慎之輔を琴平が切り捨てる一瞬のやり取りです。このシーンは、琴平が一家の長子として冷静に事態を収めるスマートさが光っていて、さらに次の殺陣との対比が美しくなる仕組みがある。

琴平と磐音

今度は琴平が半ば正気ではない。が、最後に磐音と「尋常」(ガチンコ)での試合に臨む。柄本佑の演技がねぇ、怒りながらも冷静さを保っていた姿から一転しての狂気ですよ。もう磐音をやっつけかねない勢いで切り結ぶ。よいです。

磐音と毘沙門の統五郎ら

本作唯一の室内戦にして複数戦かな。取り得もよくわからない浪人として扱われていた磐音が本領を発揮する清々しさよ。バサバサやっつけるので残忍さも孕んでいる。狭い部屋のなかというドキドキもある。うん、本作では1番好きかもしれない。

磐音と黒岩十三郎

悪役浪人のひとり、二刀流。この殺陣がいっちゃんアクションしていたのではないだろうか。なにせ二刀流だし、敵に豪傑感があるので細っこい磐音では勝てないのではないかという不安が大きい。ていうか、かなりピンチだったんじゃないかしら。どさくさで決着つかなかったんだっけか。しかし、黒岩の二刀流、ガサツでかっこよかった。

その他のよしなしごと

磐音の暮らす長屋だが、立地がおもしろい。水路沿いにあるのだが、手前の路地の構造がおもしろい。どこかで交錯していてブリッジのような立体になっている。このような状態の路地があったのか、どこかにモデルがあるのか知りたい。夜の部屋、川に面している側の障子に水面が映っていたように思える。ちょっとオシャレすぎる気もしたが、きれいだった。

統五郎、黒岩と結託していた浪人のひとりに、天童赤児という浪人がいた。彼も強者ぽかったが、ストーリーの都合のうえ派手な剣術は披露せずに舞台を去るのでちょっと肩透かしというか、残念であった。

悪役のひとり、柄本明。バタ臭すぎないかという感想もあったが、これくらいベタベタのほうがいいっちゃんね。もうひとり、奥田瑛二。ピエール瀧の代役だったとのことだが、こちらのほうがハマっていたのではないだろうか。ほのめかしの具合がよかった。

なお。磐音の元許嫁で、可哀そうな顛末を迎える。序盤の印象付けと中盤での想起、終盤での登場など、本作のなかで、決して悪くはないが、どれもイマイチピンと来ないシーンが多かった。これは原作のボリュームを映像で補わなければいけないうえでのギリギリの結節点だったのではないか。

木村文乃が演じるおこんとその父、中村梅雀が演じる金兵衛の親子漫才も作品の味付けとして忘れがたい印象を残す。

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