展覧:ギュスターブ・モロー展

《出現》が有名なギュスターブ・モローの展覧会、はじめて汐留ミュージアムに出かけた。4階、30分待ちということで行列ができており、並んで入った。鑑賞後に、この記事を残すにあたって調べてみると、同ミュージアムがルオーを収蔵している関係か、2013年にも同類の展覧会があったらしい。次回は2025年くらいだろうか。

第1章:モローが愛した女たち

学校に在籍中は大成せず、独立して制作を続けたのちに評価された作家ということらしい。第1章は、母と恋人をモデルとした小品、習作などが並んでいる。母との紐帯の強さは、幼い妹を亡くした過去にあるということだった。

本展での作家についての情報は、最後に掲示されていた年表、常展のルオーとの関連性くらいだったか。Wikipediaや他の解説に目を通したら、シャセリオーと親交があり、一時期はドラクロアに師事したらしい。はぁ、なるほど。そういった系図なのかと。

この章の目玉は《パルクと死の天使》だろう。恋人が亡くなったころの作品ということなので、そういうことなのだが、重たい。天使の後輪とその隣にある沈む太陽のバランスが印象深かった。以下は、参考としてのリンクだ。

第2章:《出現》とサロメ

《出現》がとりわけ有名だが、サロメを主題にしたいろいろな小品や習作、デッサンなどが並んでいた。衣装をまとったサロメの小品がとても印象深い。描かれるイメージは、膨大な資料に基づいているとのことだったが、オリエンタルな衣装がとりわけ美しく感じた。森薫などを連想する。王宮のような建造物が舞台となっているわけだが、本来はこんな大建築物ではなかっただろう。これも想像の産物だろうけれども、おもしろい。

いくつかのバージョンがあるらしい《出現》だが、展示されていたのはカンバスに油で描いた版のようだ(さらにそれが何種あるのかは知らぬ)。おもしろいのは背景で、柱などの白い文様は、作品の完成から作家が後年に削り出して白い線を出しているという旨の解説があった。この作品に限らず、油絵の場合は背景を混然と描くことも多いようだが、のちのちに気が変わることもあったのだろうか。

以下の旅行会社のサイトに投稿されているムッシュさんの記事、かなり掲載作品が豊富だが、中段くらいにある《出現》のイメージで白い線がわかりやすい。ギュスターブ・モロー美術館にも行ってみたいものである。

第3章:宿命の女たち

第2章のサロメと第4章の一角獣、これら以外のモチーフの作品が集められている。古典作品の情景のワンシーンが多い。個人的には、この章が1番おもしろかった。《エウロペの誘拐》《デイアネイラの誘拐》(未完成)は注文された制作されたらしいが、おそらく普段とは描き方が違う。この2つは、そういう意味で印象に残った。

《死せるオルフェウス》

亡き骸のモチーフが多い作家だが、本作もそのひとつだ。そして前述したように、この作品も全体が混然としている。亡き骸は画面の左下にポツンと置かれている。もちろん意図的な配置だが、あっさりと惨めなものだ。画面中央を埋める茶色いイメージがなんなのかよく分からない。これも類作がいくつかあるが、展示されていたのは、次項のレダで引用させてもらったツイート内にみられる作品だ。

《レダ》

これもギリシア神話ですね。類作がいくつかあるようだが、展示作品がネットで見つからない。解説にもあったが、レダと白鳥の配置が妙で、モローを含めた多くの作家が描いた同モチーフの作品と異なり、レダが左、白鳥が右に居る。レダが白鳥を誘惑しているように見えるというわけだ。隣にあった小品の同名の作品も、同じ配置だった。作家の悪戯心、悪意さえ感じる。

レダの瞳、視線もおもしろいが、レダと白鳥の白さの対比もおもしろく、全体の青々とした暗いトーンも相まって、異常に艶めかしい。ネットで見つからなかったと書いたが、報道内覧会ということでTwitterの以下のツイートで本作の画像があったので引用させてもらう(2つ目のツイートの左が《レダ》、右が《オルフェウス》)。

《ガラテイア》

これも有名な版ではないようだが、これ、どこかでも見たことがあるような気がする。言うまでもなく、倒錯的だ。

《サッフォー》

これもさまざまなバリエーションがあるみたい。どなたかの感想でもあったが、本作はとりわけ東洋画っぽくて、どういうことかというとサッフォーがアジア風の天女のような装いをみせている(落下中なのでまさしく天を舞っているわけだが)。完全に死に向かっているにもかかわらず、どこか余裕があるようにも見える。そういう特殊さが認められるか。

モローだが、インド画なども学んでいたらしく、ざっくばらんにいうとオリエンタルな雰囲気ということだが、どの作品にも端々にそのような点が見て取れるわけだ。

展示作品は以下と思われる。

《エヴァ》

グロテスクな印象がある。いわゆるイヴである。彼女が蛇(本作では男性のようなイメージになっているが)から林檎を受けている状況だが、デッサンが狂っているというか、あえてこういう絵にしているんだろうけれど、エヴァの肉体の描写が武骨な印象を与える。強そうだ。また、お腹がけっこう出ているのはすでに妊娠中であることを暗示しているのかしらん。

展示作品は以下だ。実物は、この5倍は艶めかしかった。

第4章:《一角獣》と純潔の乙女

一角獣をテーマにした作品たち、グリフォンもいた。展覧会のメインビジュアルにも使われているし、有名な題材なのだろうけど、個人的には今回はもうここまででお腹いっぱいであまり印象がない。茶々を入れるとすれば、本展のタイトルが「サロメと宿命の女たち」であって、これが第2、3章を指していることを考えると、第4章はオマケもしくは宿題なのではないか。サロメや宿命の女たちと別に、どうしてどうして純潔の乙女を描いたのか。

そもそも一角獣についてのイメージがよくわからんから、何もわからん。

といった感じで、これらの作品が特に印象に残っている。ほかにもあったが、とりあえず以上としておく。