オノナツメの『BADON』を読んだ。『ACCA』と同じ舞台のようだが、少し時代が下るのかな、あまり調べていないけれど。たまに登場する刑事さんが、ACCA主人公であるジーンを示唆するような台詞を吐いていることを、ひとつだけ発見した。作者の遊び心だろう。他にもなにかあったかな。

『ACCA」でもそうだが、この世界を描く作品では、煙草がなんらかのキーになる。というか、『BADON』では扱われるモチーフそのものだ。おじさん4名、少女1名、そこに何名か常駐キャラクターは生じているが、全体的に渋い。どっこいどっこいの気もするが、『THE GAMESTERS』よりもさらに渋い気がした。

元受刑者の男たちが揃って首都バードンに移住し、煙草屋を開業する。作中全体の経過時間は3年くらいかな。登場人物の過去が絶妙に絡み合い、もつれ、ひとつの収束をみせる。といっても、ハート、リコ、ラズ、エルモのうち、リコとエルモは、そこまで縺れてはいない。むしろリコの現在が気になるが、そこはおよそ伏せられたまま終わる。

オノナツメ作品の魅力は、なんですかね。ダンディーだったりシックだったり、ちょっとお茶目なおじさんたちが魅力であることは間違いないんだけど、そういうことだけでもなく、話づくりが巧妙というのはそうだ。今作では、ある登場人物の愛食しているパンの袋に「ANPAN」と印字されていたのが、あぁ、好きだなとなった。こういうところ、憎いよね。

ストーリーの話に戻るけど、概ね運営費の大元となったハート、その旧所属先、ヤッカラ地区をベースに暗躍する組織とか、貧困や治安の悪さから起こる問題が、原因となりやすい。まぁなんだ、私が初めて読んだ『さらい屋 五葉』も堅気の話じゃなかったよな、たしか。

ノワールというか、そういう作風なんだなと、いまさら気づく。

ついでに思い出したけど、『さらい屋 五葉』も『ふたがしら』を共通の世界線として描いていたな。こういうの、楽しいよね。読むほうもさ。ということで、『さらい屋 五葉』の再読を始めたのであった。

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