2022年の末に《チーム・ジンバブエのソムリエたち》を観た。

製作はオーストラリアなのかな。原題は 《Blind Ambition》だそうで、 2017 年のブラインドワイン、テイスティングコンテスト(フランスはボルドーで開催されているらしい、1チーム 4 人の国別対抗戦のようだが、あまり詳細はわからない)に出場したジンバブエチームの軌跡を追ったドキュメンタリーだ。

そもそもジンバブエにワインを嗜む文化が、少なくとも国際大会に出場するレベルでは存在せず、というか、国家の情勢がそのような文化をほぼ許容できないようで。ではなぜ、この代表が成立したかというと、南アフリカ共和国の存在がキーなのであった。

つまり、南アフリカ共和国で生計を立てているジンバブエ難民、あるいは移住、居住者たちがソムリエとしてチームを組める人数になったのが本作の彼らだ。

もともと南アフリカ共和国のソムリエ代表を選出する予選の上位 12 名にジンバブエ出身者の 4 人が入賞し、「それならば」と、当地のコーチであるJV(ジャン・ヴァンサン)が大会本部に掛け合ったらしい。

映画は冒頭、あくまで主人公たちの故郷はジンバブエであることを示す小さなカットが映されたのち、南アフリカのさまざまな風景を切り取ったカットを切り替わる。主にはケープタウンで、ソムリエたちの生活圏もそのようだ。おそらく。

メンバーは、ジョゼフ、ティナシェ、パードン、マールヴィンの4名で、3名はいわゆる難民だが、マールヴィンはもともと本国でも裕福なのかな。立ち入った説明はなかったが、そのような背景が示されており、ほかの3人とは少し毛色が違う。もともとは情報学か何かを学ぶつもりの傍らでワインのテイスティングに手を出したら夢中になってしまったらしい。

JVとの友情とチームの選択ミスのような

大会当日は、チームが結論を引き出すまでの助言役としてコーチが同席することが認められているらしいが(これ最後になってようやくハッキリしたよな)、JVは南ア代表チームのコーチなので、流石に大会当日に付き添うわけにはいかない。

というわけで、フランス現地にて大会日程におけるジンバブエ代表のコーチを選定するのだが、ドゥニ・ガレという人物が選ばれることになった。誰かしらなかったが、2000年前後くらいまでは世界を席巻した名ソムリエらしい。変わり者である。

フランス入りした南アフリカ共和国チームとジンバブエチームは、最終の特訓としてしばらく同行していたが、現地コーチのドゥニ・ガレは最終日だけは俺ルールでいくといってJVと離反する。ちょっとした揉め事に発展する。

本作、プロモーションに使われている材料などをみると、どうみても確かにJVとジンバブエチームの友情というか繋がりのほうが重要であることはわかる。それは事実なんだろうけど、なんだかな。

ドゥニ・ガレは、かなりメチャクチャで大会当日もチームの輪を乱しっぱなしであって歯痒い。結果、うまくいかない。

とはいえ、彼をコーチとして選んだのはジンバブエチームであったし、大会前日の最後の 1 日のワイナリー見学、そしてややリラックスしたムードでのテイスティング会がそんなに悪いかというと、そうでもないような気はした。

大会の結果とか

2017年の大会ということで、ドゥニ・ガレの雑なコーチングと初出場のプレッシャーに敗れたジンバブエチームの結果は下位に終わったのだった。それより下位にイタリアかなんか、ふつーに欧州のワイン産地として有名な国がランクしていたのは驚いたけど、まぁブラインド・テイスティングってそれだけ難しいんだろうな。

しかして、エンドテロップで語られた内容によると、チームは翌年も参加し、コーチ無しで日本などを破り、7位くらいとなったそうな。てか日本も参加する年があったんか。新型コロナ禍の 2019 年以降、大会がどうなっているのかもわからんし、雑にググる程度だと情報があんまり出てこない。

チームのその後は

それぞれが新しいキャリアに舵を切った様子が示されていた。

ジョゼフはもともと現地で自分のオリジナルワイン? の製作にも取り掛かっていた描写がちょいちょいとあって、ラストでは瓶詰めしているシーンが映されていた。作業には、同じジンバブエ難民の人たちを日雇いでチャーターしたりして、彼なりの道を模索しているらしい。

パードンは、欧州向けのワイン貿易商を営むとかでオランダ移住を決めたとか。そういうカットが映されていた。マールヴィンは、やはりなんかのコネクションなんだろうけど、上海か香港かで開催されたチャリティー的ななんかのVIPみたいな感じで招待されたりと、そういう感じだった。

ティナシェについてだが、まず冒頭の小さなカットが彼の帰郷時のショットであることが判明する。ジンバブエの地元に里帰りして祖父と再会し、幼いころから散策した近所の山の頂から故郷の大地を眺める彼の姿が印象深い。地元でワインを作りたいみたいな話をする。感動的だ。

なんというか

彼らは難民として南アフリカ共和国入りした(マールヴィンはよくわからん)。当然、彼らの努力もあった。巡りあわせというものもあるだろう。ジョゼフだったかな、最初はレストランの裏の畑仕事からキャリアをスタートさせている。

一方で、並行して、憶測交じりではあるが、彼らはもともとジンバブエでもちゃんとした職があり、生活基盤のあったからこそ異国で生き抜く目があったんだなという面もあったのかなと。いや、そういう積み重ねこそがあらたな人生における成功にもつながっているということだが。

しかし、公式ページの TOP の写真などをみると、JVの笑顔が 1 番ステキなんだよな。彼がどれだけ、チーム・ジンバブエを愛していたかが、伝わってくる。

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