2022年の年末に《THE FIRST SLAM DUNK》を観てきた。

原作は直撃世代で、同級生に半ば無理やり単行本を読まさせられた。放課後はほとんどバスケットボールに興じていた気がする。原作のおもしろさはすでに説明するまでもないが、既存のアニメのファンもこんなに多かったのかという印象はあり、公開までの事前情報だけで前評判が揺れる作品だったな。

大まかには、2 時間の映画にするにあたって、こんな脚本になりますよね、という感想にはなった。

オープニング、メインの 5 人がそれぞれペン入れ、配色され、それが動き出すという演出に沸くような気もするが、なんかよくわからない気もした。あれはどこの階段なんだよというね。体育館のコートに降りていく階段であんなに横に広がれないよね、という細かい意識が働いてしまうだけなんだけども。

映画の主役としては宮城リョータが配され、どこかの雑誌で読み切りで掲載されたエピソードが挟まれる。調べたら、週刊少年ジャンプに掲載の『ピアス』(1998)だそうだ。ヤングジャンプ(2001)でも再掲されたらしい。異色だな。ネットにアップされた冒頭のページをチラッと目にしたことがある程度だが、当時から重たい過去を持ってきたなという印象があったね。

中学生の半ばくらいまでは内気な少年だったリョータが、高校生になった時点で喧嘩っ早い少年になっている経緯こそ省かれており、なんなのかなという気はするが、「ピアス」というタイトルを鑑みると思わないところもない。読み切り短編のほうだと描かれていたんだっけか。

夏の夜、雨天の体育館、時間の経過

映像ならではだなと感じた表現は、リョータがファールシュートを放つ瞬間、彩子と語った夜の音がオーバーラップするシーンだ。今になって思うと、あんまりスラムダンクっぽくない、というか直截に言うと『バガボンド』っぽい雰囲気も感じる。同じような描き方はコマ割りによって漫画でも可能そうだが、少なくとも漫画『SLAM DUNK』には感じなかった大人っぽさがあった。とは思うんだけど、このシーンって原作だとどんなだったんだっけ。原作にあるんだっけ? ないんだっけ?

刻々と迫るタイムアップに対し、秒間で選手たちが切磋琢磨している状況はよくわかる。漫画の下手なアニメ化に起こりがちな、変に間延びしたアニメーションになっていないのは凄かった。クライマックスの緊張感も中途半端さをまったく感じさせない圧巻の出来。

逆に、リアル性を重視した結果なのか、コンテ的な問題なのか、いくつか気になったところもあって、たとえば、三井の有名なシーンのひとつ、何度でも甦えるシュートだが、ボールがネットを揺らすカットと三井の台詞のカット、あれ読者はイメージ通りだったろうか? 個人の感覚といえばそれまでだろうが、前後は逆ではないか。

また、河田と桜木のマッチシーンも、コミックで読んでいるときほどには、時間の凝縮感や桜木の凄みが、伝わりづらかった。河田が「まだいる」みたいに心境をモノローグするが、いうて画面では一瞬のこと瞬間のカットが過ぎて、何のことかわからない。そうでもなかったか?

流川の存在がとにかく謎だなと

「そもそも湘北の学力レベルどないなっとんねん」みたいなツッコミを見ると、たしかになーとなる。が、それはそれで置いておくとして、本作は流川の立ち位置が 1 番よくわからなくなったね。桜木もそういう部分はあるが。

一応、桜木はバスケットボールの外から来た男。異端児。なんかケガするけどチームを鼓舞して活躍するという原作由来の部分が強く残っているので、違和感も小さかったが、流川がどういう背景でこの5人の中にいるのか、どうしても目立つ。そこに別に理由はないので、原作の物語が積み重ねたはずの厚みの部分を除いては、原作を読んでも感触はほぼ変わらないと思われるが、それでも。

今作および読み切りにおけるリョータにせよ、原作あるいは今作で挟まれた山王の沢北の情報にせよ、その他のいずれのキャラクターにせよ、なんかしらバックボーン(1on1なり)が語られるものだが、流川になるとそれが皆無なのが、あらためて目立ったのは否めない。

などと書きながら流川のバックボーンの設定みたいなのを調べていたら、井上雄彦の『楓パープル』で同系の主人公(同じ人物ではないがモデルのよう)を描いていたらしい。はえぇ、そうでしたか。仕方ない部分かねぇ。

しかし、流川主人公、桜木主人公、リョータとそれぞれの主人公でやってきた関連作品を、仮に「SLAM DUNK」サーガと勝手に呼ぶとしたら、少なくともあと 2 回はなにかできるんじゃないのかとも思う。

本作、もともとが 90 年代の作品ではあるわけだが、宮城リョータの過去エピソードが絡まりつつ話の軸が回ることも含め、なんというか全体的には「懐かしさ」が強い。海に還りたいですね。

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